Study
【飛躍11号】
転換期を迎えたベトナムの ヘルスケア産業と事業機会
Hiyaku No. 11
Published 3月 2017. Available in
初めてベトナムを訪問された方は、ベトナムの「薬剤師診療」に驚かれるのではないだろうか。劣悪な環境で長時間待たされ、(リファーラルプロセスを経なければ)医療費の自己負担も強いられる病院を受診するかわりに、ベトナム人は、街に散在する薬局に「小さな診療所」の役割を求めている。薬局で働く薬剤師は、患者の症状を「診て」、知識と経験をもとに薬を「処方」している。ここでいう「薬」とは、決してOTCに限らない。医療用医薬品でも、医師の処方なく提供する。患者の支払余力も考慮し、箱単位ではなく、1錠単位で患者に販売しているところも少なくない。
上記で見られるような、薬局が医療用医薬品の提供を含めたプライマリケアを担うこと自体は、ASEANでは決して珍しいことではない。しかし、上記の点を差し引いたとしても、ベトナムを訪れた誰もが、その医療環境を異質に感じるだろう。本稿は、ASEANの中でも独特な環境にあるベトナムのヘルスケア産業に焦点をあててみたい。というのも、まさに今、ベトナムのヘルスケア産業は大きな転換期を迎えようとしているからだ。そして、言うまでもないが、大きく変化するタイミングは、大きな事業機会でもあるからだ。
まずは、第1章で、ベトナムの何が独特なのか、について紹介し、続く第2章では、ベトナムヘルスケア産業の大きな変化について紹介する。最終章では、こうした流れがもたらす事業機会について論じる。
Hiyaku No. 11