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インドネシア小売市場の変化 -後編-

インドネシア小売市場の変化 -後編-

2023年2月28日

人口2.7億人を擁するインドネシアは、経済面においても東南アジアで大きな存在感を放つ。2030年にはASEAN 6の合計GDPのうち4割をインドネシアが占めると見られている。一人あたりGDPで見ても、2030年のインドネシアの値は、2022年のタイのそれを上回る水準に至る。高成長を続ける中、コロナ禍にはインドネシア消費者の購買行動や購買重視点には変化も見られた。引き続き目が離せないインドネシア市場について、弊社への相談は増えており、中でも小売市場関連は多い。

本稿ではこのインドネシア小売市場の4つの変化を二回に渡って論じており、今回はその2回目である。(※前編はこちらよりご覧ください)

伝統的小売と創るエコシステム

前回は「オンライン浸透による構造変化」と「近代的小売の小商圏化」に触れた。GoTo(Gojek + Tokopedia)等のデジタル/オンラインプラットフォームの台頭に対して、近代的小売のリアル店舗市場ではコンビニといった小型店舗・小商圏フォーマットのシェアが高まっている。どちらも購買における「利便性」という提供価値で戦っているわけだが、一方で、ショッピングモールや百貨店、ハイパーマーケットといった大型業態はどういった方向性を模索しているか。もちろん、他国・他地域でも常套手段である、大規模フォーマットを活かした“体験型”購買の訴求は行っている。それに加えてインドネシアで特徴的なのが伝統出来小売との協業だ。インドネシアにおいて、伝統的小売はリアルリテールのシェアの過半を占める重要なチャネルである(図表1)。

伝統的小売が持つ高い店舗密度は、インドネシア消費者にとって、最も物理的・精神的に近いリテールたらしめている。大型業態とは正反対の特性であるがゆえ、補完関係も生まれやすい。実際、カルフールやそごう、ロッテマートは、伝統的小売の経営支援を通じてネットワーク化を図り、彼らの店舗に注文受付窓口、配送拠点としての役割を担わせている。この協業スキームは、インドネシア政府も伝統的小売保護のため促進しており、今後更なる進化が期待されている。

また、デジタルプレイヤーも伝統的小売との連携は進めている。BukarapakやGudangadaはB2Bオンラインプラットフォームとして、伝統的小売とメーカーの間の流通のディスラプトを進めている。従来は、多重階層の卸業者が存在し流通効率が非常に悪かったが、それをオンラインプラットフォームに置き換えようというのだ。伝統的小売側は、オンライン上でメーカーに直接発注をかけることができ、納期短縮と流通マージン削減が実現できる。メーカー側にとっても、ブラックボックスであった伝統的小売への流通が見える化できるというメリットがある。

このようにオフライン/オンライン、双方のプレイヤーがインドネシア伝統的小売とエコシステムを構築しようとしている。

「健康」と「環境」を重視するインドネシア消費者

最後のトレンドは、消費者に寄った観点を提示したい。弊社が昨年実施した東南アジア各国の日用品(シャンプー等)の購買重視点調査によると、インドネシア消費者は他東南アジア国と比べて「健康」と「環境」を重視する(図表2)。

年齢ピラミッドが他国と比べると若年層に偏るインドネシアであるが、コロナ禍を経て価値観の変化があったものだと考えられる。実際、弊社の別調査でもソーシャルメディアにおける「健康」や「環境」といったキーワード発信割合はインドネシアで高まってきている。日本等の先進国とも遜色ないレベルでコミュニケーションが為されている。

「健康」、「環境」を訴求した商品・サービスの導入適正期は、経済ステージや年齢ピラミッドといったマクロ指標で判断できるものとされていた。それがソーシャルメディアといった消費者側から発信できるプラットフォームの浸透によって、状況が変わってきている。マクロ指標が閾値を超えた段階で、小売やメーカーがトップダウンで消費者を啓蒙できる構造ではなくなってきているということだ。インドネシア消費者が持つ本質的な価値観が、ソーシャルメディアを通じて購買行動に直接的に発露されているのだ。

以上、二回に渡ってインドネシア小売市場の変化を4つ紹介してきた。もちろん、これら以外にも興味深いトレンドは多く存在する。この論考が巨大市場であるインドネシアを上手く捉えていくための一助になれば幸いである。

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