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CLOの選任による持続可能な物流の実現

CLOの選任による持続可能な物流の実現

2025年2月28日

昨年4月から時間外労働の上限規制がトラックドライバーにも適用された。いわゆる「2024年問題」の発生である。これによりトラック不足の問題が2024年から2025年にかけて段階的に顕在化する可能性がある。加えて、少子高齢化により人手不足が深刻化し、物流危機は長期化する見込みだ。

対して、政府は物流効率を中長期的に高めるための政策的措置として新物効法を公布した。その最たる特徴は、物流事業者だけではなく、荷主に対しても物流効率化に取り組む努力義務を課したことだ。一定規模以上の特定荷主については、それに加えて、物流統括管理者の選任と、物流の効率化に向けた中長期計画の作成・報告が義務付けられる。該当する事業者は、同法の施行を見据えた施策を早々に講ずるべきだろう。

物流統括管理者は「物流部長」ではなく、経営幹部から選任される「CLO(Chief Logistics Officer)」である。その管掌範囲は物流にとどまらない。調達、生産、販売なども含めたサプライチェーン全体での最適化を推し進めることが求められる。役職名は物流統括管理者やCLOかもしれないが、実質的には「CSCO(Chief Supply Chain Officer)」と称するに相応しい役割・権限を持つ存在となることが期待されているのである。

実のところ、物流の効率化にはサプライチェーンの全体最適が不可欠である。例えば、ある機械メーカーはトラックの積載率が30%以下にもかかわらず、1日3回出荷していたが、その頻度を1日1回に減らすことでコスト削減に成功した。また、ある印刷会社では営業マンの慣習で「朝一での納品」を基本としていたが、時間指定を緩和することでトラックの稼働効率が向上した。両社とも、他部門が協力することで物流を効率化するという全体最適の思考を欠いていたのである。

では、その全体最適は本来誰が担うべき役割だったのだろうか。それは紛れもなく「経営者」であり、「CLO」である。

欧米企業では、CLOやCSCOは決してめずらしい役職ではない。それだけが原因ではないとはいえ、日本企業よりも全体最適への意識が相対的に高く、収益力の差となって現れることもある。

さればこそ、CLOの選任は新物効法で義務付けられたがゆえに取り組むことと捉えるべきではない。サプライチェーンの全体最適を実現するための手段なのだ。同法の施行を待つことなくCLOを選任し、相応の役割・権限を付与することによってサプライチェーン全体の最適化を推進すれば、他社に先んじて収益力を高められる。物流危機のさらなる深刻化にも備えられる。現場の属人的ノウハウに依存し、個別最適を優先しがちな日本企業の経営体質を変えるきっかけにもなるはずだ。

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