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Femtech米国市場のトレンド

Femtech米国市場のトレンド

2024年12月19日

Femtech米国市場の業界俯瞰と今後の市場成長に向けたビジネスモデルの示唆

女性の健康課題をテクノロジーで解決する製品・サービスを扱うFemtech業界はグローバルで成長が著しい領域であり、多様なサービスが常に発現している。特に米国を中心にFemtechサービスが拡大しており、日々新興企業が台頭している。

このような中、撤退する企業も少なくなく、時価総額が順調に伸びる企業と経営破綻に陥る企業で明暗が分かれている。

Femtechサービスの成功には、患者データの収集・分析を通じ、パーソナライズ化した治療やケアプログラムを提供することが重要であると考えられる。成功企業が収益化に成功している背景にはユーザーだけでなく、企業(雇用主)を巻き込んだ福利厚生としてのサービス展開や、保険償還を活用した収益化に成功しており、これらを実現するための質の高いサービス提供に向けたデータドリブンなビジネスモデルが要になるのではないだろうか。

Femtech業界の全体像

Femtech業界は、女性のライフサイクル全般にわたる多様な健康課題に対応するサービスを提供しており、月経・生理や妊娠、不妊、避妊、産後ケア、更年期障害などの分野で、症状軽減や成功率向上を目指す製品・サービスが展開されている。

さらに、女性特有疾患の予防・治療、セクシャルウェルネスの推進、個人のライフスタイルに応じたヘルスケアも重要な領域として拡大が予想されており、これらの領域は、女性の健康を総合的に支え、身体的・精神的・社会的な健康の向上に寄与している。

具体的なビジネスモデル

Femtechの具体的なビジネスモデルは、ウェアラブルデバイスを活用したデータ収集、データ分析を基にした個別化治療の提案、そして治療サービスの提供を柱としている。

まず、ウェアラブルデバイスやアプリを通じて、ユーザーの月経周期や受胎可能期間などのデータを収集。次に、AIやデータ分析プラットフォームにより、ユーザー個々の健康状態を予測し、IVFやIUI等の不妊治療やその他の疾患に関する治療計画を最適化することで、治療効果の改善を図っている。

さらに、治療周りの高額な治療費に対応する融資サービスや薬品配送サービスを展開し、治療にかかる患者の負担を軽減する。このビジネスモデルは、女性の健康ニーズに応じたパーソナライズされたケアを提供しつつ、テクノロジーと医療サービスを融合させた先進的な取り組みであると言える。

Femtech業界のイネーブラー

Femtech業界の成長を支えるイネーブラーは、柔軟な働き方や技術革新、個別化医療への注目の高まりがある。米国では女性労働人口の増加に伴い、生理痛や更年期障害などの健康課題に直面する女性が増え、Femtechサービスの需要が高まっている。

また、デジタル技術やAIの進展により、遠隔医療やチャット相談が普及し、忙しい女性でも簡便に医療アクセスが可能となるインフラ基盤の拡充が行われている。さらに、高齢化に伴う特定女性疾患の増加や予防医療に対する期待向上が、関連製品やサービスの市場拡大を後押ししている。個人の健康状態や雇用状況に適した予防や治療法を提供することで、Femtech業界はさらなる市場成長を実現できるだろう。

Femtechのビジネスモデルは、患者データを活用した個別ケアの提供を核として、アプリやデジタル機器で収集されたデータをAIで分析し、患者にパーソナライズされた治療フィードバックを提供することで、個人に適した治療享受による治療結果の改善が目指されている。

また、患者個人を顧客とせず、雇用主の企業を通じた福利厚生としてサービスを提供し、病院や保険会社とも連携できる質の高いサービスを提供することで、収益化を図ることが成功の要諦となるのではないか。

特に米国では、Femtech企業が月経や不妊治療、メンタルヘルス分野で同様のモデルを展開し、デジタルヘルスやリモートケアを拡大している。

今後は、更年期障害や授乳・産後ケア等、女性のライフステージに応じた疾患や、必要となる健康ケアに対するサービスの拡大も見込まれ、多様なサービスが展開されていくだろう。

データドリブンな医療の進化により、女性の健康課題解決が加速するトレンドは今後も継続していくと予想されるため、新規参入を検討される場合は、製品・サービスにより取得できるデータと関連技術、ステークホルダーとのあるべき関係性を検討する必要がある。

共著:猪 奈々美(東京オフィス)

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