COP
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By David Frans, Yvonne Ruf and Daria Koroleva
1.5℃シナリオを達成するために必要なクリーンテクノロジーの多くは、すでに技術的に利用可能なものばかりである。しかし、それらを拡張していくには、さらに膨大な研究開発投資が必要となる。本稿では、弊社が考えるリスク軽減策が、最先端技術を市場に投入し、排出量削減に大きな効果をもたらすプロセスをどの様に推進するかを論じたい。
2030年までに現在の脱炭素化目標を達成するために必要な技術の多くは、すでに利用可能な状態にある。例えば、水力発電、電気分解、ヒートポンプ、風力発電、太陽光発電など、市場ですでに利用可能なソリューションなどが挙げられる。それらの技術は、十分に成熟しており、商業利用が可能な状態である。また、天然ガス開発におけるCCSの活用、CO2を大気から直接回収するDAC、アンモニアやメタノールを燃料とする船舶は、まだ試作段階、あるいは実証段階にある。
しかし、どのような開発段階であっても、新技術の導入に多額の資金を投じるリスクが伴う。そうしたリスクを軽減するために、それぞれのリスクに対応した政府による支援メカニズムが必要である。弊社が提案する「De-risking」アプローチは、各技術が排出削減効果をもたらす為に必要な多額な投資を実現することを企図するものである。
IPCCによると、CO2換算トン当たりの削減コストが100ドル相当の技術の活用によって、世界全体の排出量を2030年までに2019年対比で半分に削減することが出来る。これは1.5℃の目標内にとどまるために必要な削減量と一致しているものである。しかし、これらの削減を達成するための技術は、すでに実現可能であるものの、CO2換算トン当たりの削減コストを100ドル以下に下げるためには、その技術活用の大規模化が必要である。
太陽光発電と風力発電は普及が進み、経済的に十分な規模に達したグリーンテクノロジーの一例である。両技術とも、エネルギーの平準化コスト(LCOE: Levelized Cost of Electricity)は過去10年間で劇的に低下し、それぞれ90%、70%低下している。とはいえ、もっと大規模に活用されるべきだと思われるグリーンテクノロジーは、まだ他にもたくさん存在する。
例えば、二酸化炭素除去技術(CDR)と二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)は、大規模活用に向けた初期段階にある例だが、これらは発電、セメントや化学品生産など、CO2の削減が高価で複雑なセクターにとって重要な技術である。例えば、CCSの場合、投資を増額し、回収能力を強化することで、各回収プラントにおいて、大きなスケールメリットを得る。ガスコンバインドサイクル発電所では、年間10万トンのCO2を回収するシステムのコストは、CO2は1トン当たり95ドルであるのに対し、年間20万トンの回収能力を持つシステムの場合は、75ドルである。
水素製造のための電解槽も、重要な脱炭素技術を商業的に成立させるためにリスク軽減策が必要とされる好例である。そのコストはまだまだ高く、投資の妨げになっている現状である。しかし、累積設備容量を増やし、効率性向上を可能にするためには、投資が必要である。
これらの技術を従来の技術と比べてコスト競争力のあるものにするためには、大規模な資金投入が必要である。推計によると、気候変動目標を達成するためには、グリーンテクノロジーとインフラへの設備投資を2020年代に年間1.8兆ドル、2030年代には年間3兆ドル近くまで増加させる必要があるとされている。2050年までに累計56兆米ドルが必要であり、そのうち約30%をグリーンテクノロジーに投資する必要がある。リスクを軽減することで、企業や政府は、これらの投資に取り組むための確かな基盤を得ることができる。
必要な資金を得る上で、企業はそういった投資のリスク軽減策を工夫する必要があり、コストが十分に下がる前に行動することが出来る。「De-risking」アプローチは、効果の高い技術への投資が銀行にとって融資可能なレベルになるまでに、公的資金により民間投資を支援することを企図している。リスクを軽減するためには、企業は補助金、購入保証、投資における提携など、さまざまな支援メカニズムを検討し、特定する必要がある。最終的には、特定の技術、地域、投資対効果、リスクを考慮した上で、これらのメカニズムを組み合わせ、各プロジェクトに合った解決策を提供することができる。
投資先を見つけ、脱炭素技術を共同で導入するための協力体制を築くことは、参加者が相乗効果を享受し、協調しながら課題に取り組むことができるため、リスク軽減の成功要因になる。2021年、グラスゴーで開催されたCOP26では、条約締結国間の討議・取り組みに加え、あらゆる産業や地域の脱炭素化を促進する合意や提携関係の推進が見られた。
例えば、 COP26で発足した、日本を含めた26か国からなるInternational Aviation Climate Ambition Coalitionでは航空業界におけるパリ協定の実現に向けた脱炭素を加速する取り組みとして、 持続可能な航空燃料(SAF)の開発・普及を推進し、排出量を抑え、 1.5 ºC 目標を達成することを目指している。このようにさまざまな国や企業の力を結集することで、様々な種類の投資やノウハウが集まり、持続可能な航空燃料の生産規模拡大に伴うリスクを本質的に分散させることができる。
また、コーポレートファイナンスに代わる資金調達手法として、プロジェクトファイナンスの活用がその一例であり、対象となるリスクの高い事業をSPV(特別目的会社)として立ち上げ、親会社のリスクを限定することが出来る。プロジェクトファイナンスでは、民間部門、公的部門またはその両方から資金を調達することが出来る。通常、リスクの高い事業の資金調達リスクは株主が負担し、リスクが顕在化する可能性を最小限に抑え、貸し手に対しても対象事業が財務的に魅力であることを保証する。こうした事例は、気候変動を食い止めるために必要な最先端技術のリスク軽減に、お互いに協力し合うことがいかに有効かを示すものである。
今回のCOP27では、新たな連携関係や議論の推進が期待されている。脱炭素化の促進や新しいグリーンテクノロジーの導入の必要性に鑑み、企業はどのような提携関係や補助金が生み出されるかを把握し、新しい技術が導入される際にどの様に活用する等、迅速に行動する必要がある。技術的なリスクを回避し、地球温暖化を抑制する方法については、最新レポート『脱炭素化の加速』と弊社の各サービス紹介をご覧ください。
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