COP
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By David Frans, Yvonne Ruf and Daria Koroleva
企業によるサステナビリティへの取り組みと気候変動を抑えるための取り組みが始まっている。一方で、企業には、サステナビリティと気候変動を意識した経営が益々求められている。本稿では、何もしないままでは、企業の競争力と利益が損なわれてしまうこと、そして今こそ行動を起こすべき理由について考察していく。
多くの企業は気候変動対策を真剣に受け止め、排出量を抑制するための目標を掲げている。しかし、それでは必要な効果を得るにはまだ不十分である。例えば、世界の大手上場企業が設定した排出量削減目標を全て合わせても、2030年までに約20%しか削減できない。必要とされる総削減量43%に対して、その差は歴然としている。多くの企業は、明らかに、この課題の及ぼす影響の大きさを完全には理解できていない。
しかし、あらゆるステークホルダーからの強い要望と、さらに最近のエネルギー価格の高騰に後押しされるかたちで、行動を起こさざるを得ない状況になりつつある。企業が必要な規制に対応し、有能な従業員を惹きつけ、顧客の期待を満たし、株主の関心と投資を継続的に確保するためには、脱炭素化と気候変動対策に強く焦点を当てた取り組みを実践していくことがますます重要になる。一方、何もしなければ、企業における収益の大部分は、リスクにさらされることになる。
国内外の気候変動規制はますます厳しくなり、今後もその傾向が続くと考えられている。例えば、Scope 3排出量に関連して、企業に対するプレッシャーが高まっている。EUでは、CSRD (企業持続可能性報告指令)の提案が採択され、その報告内容の専門的な詳細は、2022年末までに確定する予定である。米国の連邦政府レベルでは、証券取引委員会(SEC)が気候関連情報の開示を求める規則の提案を公表した。
CO2価格もまた、規制上の焦点の一つである。先進国や一部の途上国においては、今後、数十年の間に、CO2価格は現在の100ドル/トン以下から、200ドル/トンまで上昇すると予想されている。しかし、今日のCO2価格であっても、金融サービス業ではEBITDAの約2%、化学工業ではEBITDAの約35%、運輸業では50%以上と、企業の利益のかなりの部分が既にリスクにさらされている。最近のエネルギー価格の高騰と相まって、化石燃料の燃焼による1トンのCO2は、企業の収益性に2度打撃を与えることとなる。
さらに、さまざまな炭素関税によって、排出量を削減できない企業は市場から退出させられるようになると考えられている。生産者は、顧客基盤を失いたくなければ、ターゲットとする市場において、これまで以上に厳しい国内基準に準拠することを余儀なくされるだろう。
気候変動対策の規制強化は、企業の利益に影響を与える。一方、人材を惹きつけ、確保する能力は企業の将来を左右する。人事担当者の約75%が、企業のESGパフォーマンスが人材獲得・維持に効果を発揮していると考えている。この評価は、従業員調査でも裏付けられており、2020年以降、サステナビリティと気候変動対策の重要性の認識が50%以上高まっていることが示されている。
若い世代に後押しされ、既存の従業員及び、今後入社する可能性のある人材が、サステナビリティと気候変動対策をすべての意思決定プロセスにおける優先事項として位置づけ、必要となる文化と組織の変革を推進し続けるだろう。したがって、彼らのサステナビリティに対する意識に適応しようとしない企業は、人材獲得競争において解決不可能な問題に直面することになるだろう。
同様に、多くの消費者も、サステナビリティを推進する企業活動を行っているブランドを求め、支持するようになった。環境意識の高まりと、地域活動への参加意欲の高まりは、購買意欲にも急速に影響しつつある。このような消費者は、サステナビリティな選択をするために、企業の価値観から製造やサプライチェーンの実践に至るまで、あらゆる情報をチェックしている。
68%の消費者は、環境への負荷を軽減しているブランドを絞り込む予定であると回答した。さらに61%の消費者は、買い物の際に、エネルギー効率に関するラベル表示を求めている。また、世界の消費者の約半数(49%)が、サステナビリティ、または社会的責任のある行動を示すブランド製品に対価を支払うと回答しており、消費者は買い物の仕方でサステナビリティを支持する意思があることを示している。
気候変動は、私たちの社会と経済にとって重要な課題の一つである。CO2やエネルギー価格の上昇、炭素国境調整メカニズムの導入、従業員や顧客のサステナビリティに対する意識の高まりなど、すべて同じ目的に向かっている。それは、脱炭素化である。
企業は、あらゆる方面から外的・内的圧力を受けており、この状況に対応するためには、今すぐ行動を起こさなければならない。この課題に取り組まない企業は、すでに気候変動対策への投資を開始している企業に追いつけなくなるリスクを負う。その結果、企業は収益性を失い、人材を惹きつけ、確保する能力を失い、顧客の信頼も失うことになる。
企業に課せられる規制や要求には圧倒されるものもあるが、脱炭素化を推進し、そして低炭素経済への道を歩むことは、企業にとってビジネスを変革し成長させる機会でもある。また、サステナビリティな製品に対価を払おうという意欲も高まっている。サステナビリティリーダーであることは、非常に強固な立ち位置を得られることは明らかである。
ここからの数ヶ月、数年は、企業が永続的な変化を実行に移す好機となるだろう。脱炭素社会の実現に向けたサプライヤーとの連携、省エネ技術への投資、再生可能エネルギーへのアクセスの確保、企業戦略のあらゆる側面におけるサステナビリティと気候変動対策への取り組みは、企業が化石燃料からより自立し、ネット・ゼロ・エコノミーへのコミットメントを促進するための潜在的な取り組みのほんの一例に過ぎない。
このような激動の時代であっても、企業が今すぐ行動を起こさなければ、すでに気候変動対策に投資を始めている企業に取り残されてしまうリスクがある。企業は、CO2税の無駄遣いをしないことで、リスクをチャンスに変えることができ、また、脱炭素化への取り組みを評価する顧客をより多く獲得することができるのである。
ローランド・ベルガーでは、企業のサステナビリティ戦略の策定や、サプライチェーン全体における潜在的な排出削減量の特定をサポートしています。
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