Learn more about the global crisis in automotive semiconductor supply and what near-, medium- and long-term actions Roland Berger recommends.
半導体不足 2023:苦闘は続く
問題が山積:半導体不足による自動車・産業用機器業界の減速は続く
半導体市場において、家電製品向け需要は緩和しているものの、自動車・産業用機器企業では引き続き「レガシーノード」半導体が供給不足に陥っている。本稿では、経営者が認識すべき懸案について解説する。
長引く半導体不足は、一部の産業にとっては今後も止まる気配がない。ローランド・ベルガーの最新レポートによると、特に「レガシー」半導体技術やレガシーノードに依存する自動車・産業用機器各社への影響が続く。家電用では不足が緩和されつつあるが、チップ需給のひっ迫は今後数年にわたり当該企業に影響を及ぼすと予想される。
一方、部品ユーザーや生産者については在庫増大やコスト増大が負担となり、サプライチェーンへのブルウィップ効果(サプライチェーンの上流ほど需要変動が増幅する現象)が生じるおそれがある。このような状況によって、ただでさえ不透明な状況がいっそう複雑化している。ここでは、「レガシー」チップ不足の事態が続くことを見越した上で最善の結果を模索するために、自動車業界・産業用機器業界のリーダーが成すべき事を考えていく。
新しいかたちの半導体不足
このところ世界的な景気後退への不安が高まっていることから、電子機器に対する消費者の需要が3割軟化している。いくつかの技術分野では、半導体生産のひっ迫が解消され、ここ2年間世界で続いてきた短期的な半導体不足が、一時的だが、ある程度は解決された。しかし、問題そのものが解決されたわけではない。
民生機器の需要が減退したため、最先端かつ先端的なノード半導体の供給状況は改善したが、自動車・産業用機器業界で多用されるレガシー半導体(8インチ・6インチウエハ)の供給不足は未だ改善していない。今後も不透明である。
このため半導体バイヤーは現在、在庫調整と継続的な供給不足の板挟みになって綱渡り状態にある。ただし、このところ、半導体メーカーやEMSプロバイダー、一部のティア1企業は在庫確保のために備蓄してきたので、今後は過剰在庫が問題になりそうだ。
こうした流れから、大きなブルウィップ効果が直近に生じることが予想されている。半導体不足に悩む企業の多くは、過去には平均16%だった安全在庫を23%以上まで増やしているので、特に資本コストの上昇を考量すると財務負担の是正が必要となっている。
「レガシーノード」の不足はすぐには解消しない
半導体不足の解消はここ2年間大きな問題となっている。ただし、自動車・産業用機器業界で頼みの綱とされるレガシー半導体は注目を浴びることもなく、対策が練られることや、公に議論されることもない。
例えば、自動車市場の62%、産業用機器市場の57%は、アナログ半導体またはミックスドシグナルチップ、マイクロコントローラやMEMSなどの特殊部品に頼っている。ただし、チップメーカー側は事業の「将来の保証」を求めてより先端的な製品に注力する傾向を強めている。その結果、こうした旧タイプのものや特殊な半導体はますます供給不足になるだろう。
公的な対策についても、ほとんど効果が期待できない。例えば、最近成立した米国のCHIPS法でもレガシーノードの増産に割り当てられた生産量はわずか5%。またEuropean Chips Act(欧州半導体法)でも、予算や指針が不明確で自動車・産業用機器業界を悩ますレガシーノードの不足解消にはあまり効果が期待できない。現状の内容では、少なくとも市場の是正が本格化する2024~2025年までは目に見える影響はないと予想される。
今後、関連企業は、時期を見計らって中央集約型E/Eアーキテクチャに移行し、最新のテクノロジーノードで半導体をデザインインすることが求められる。また、キャッシュフローバランスの改善と不要コスト削減のために在庫の適正化・最適化を進めつつ、同時に予備部品のボトルネック対策を実行していかなければならない。短期・中期・長期における対応策と7つの重要な供給戦略についての詳細は、「半導体不足 2023:苦闘は続く(レポート全文PDF:英語のみ)」をダウンロードの上、是非ご覧ください。
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