COP
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事業を運営するためには、エネルギーが必要である。そして、ほぼ全ての国がクライメイト・ニュートラル(二酸化炭素の実質排出量がゼロの状態)を目指し、再生可能エネルギーの導入の拡大を約束した。しかし、この挑戦は、求められているスピードでは進展していない。このような状況において、企業はどのようにすれば、政府による再生可能エネルギー拡大の遅れを乗り越えて、自力で再生可能エネルギーを利用できるようになるのか。
地球温暖化を1.5℃に抑えるためには、世界の再生可能エネルギーを現在の2,500GW超から2050年には27,700GW超に急増させる必要がある。しかし、世界の人口が増え続け、より多くの国がデジタル化の時代に進むにつれ、電力需要は増加の一途をたどっている。さらに、2020年から2030年にかけては、産業プロセスや暖房システム、モビリティ・交通手段の電化など、ネットゼロ経済への移行に必要な技術への切り替えだけでも、電力需要がさらに27%伸びると予測されている。
とはいえ、再生可能エネルギーの拡大が思うように進まないのには、いくつかの理由がある。第一に、国や地域によって太陽光や風力エネルギーの発電ポテンシャルが異なるため、エネルギー資源が偏在していることだ。第二に、時間的な課題がある。特に再生可能エネルギープロジェクトにおける開発リードタイムは長いのだ。第三に、既存の市場構造においては、必ずしも十分な再生可能エネルギーを展開する余地があるわけではないという点である。どのエネルギー源を使うかという選択肢を持つことは、経営における脱炭素化のための重要な手段でもある。
しかし、国や地域によっては、企業がエネルギー供給元を選択することに制約がある。国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)と第28回締約国会議(COP28)は、それぞれアフリカと中東で開催される予定である。両地域には、特にEU地域にとって膨大な再生可能エネルギーが眠っている可能性がある。そこで、これらの地域が再生可能エネルギー開発にどのように貢献できるのか、誰が開発の最有力候補でいられるのか、再生可能エネルギー拡大のために克服しなければならない政治的・企業的課題は何かについて探ってみることにしたい。
アフリカと中東は、グリーンエネルギーの潜在的な可能性という点で、大きく異質な景観を有している。モーリタニア、ナミビア、ニジェール、南アフリカやスーダンといったサハラ以南の一部の国にも太陽光や風力の潜在的開発余地があるが、太陽光や風力エネルギーの潜在力が最も高く、利用可能な面積が最も大きい国のほとんどは、アフリカ北部や中東にあり、アフリカ北部や中東がより多くの太陽光、風力の発電ポテンシャルを持つ。とはいえ、アフリカや中東での再生可能エネルギーの拡大には特定の課題がないわけではない。
地域によっては、特に再生可能エネルギーの開発余地が多い遠隔地は、既存の送電網のインフラが不十分であることが多い。さらに、政情不安、再生可能エネルギー事業に対する政府のコミットメントの欠如、土地取得や許可取得のプロセスの遅れなどの要素が、再生可能エネルギーの拡大を阻むことが多い。また、国によっては、石油やガスの消費に補助金を出していることがあり、これも制約を拡大する要素となっている。そして大規模な再生可能エネルギープロジェクトには、莫大な資金が必要である。
しかし、最近では、この観点からいくつかの進展が見られている。ナミビアは、大規模な太陽光発電と風力発電への投資を含む、推定94億米ドルのグリーン水素プロジェクトを発表し、2026年に生産を開始する予定である。同様に、COP26では、南アフリカの低排出ガス開発への支援の一環として、85 億米ドル規模の金額が約束された。
ケニア、モロッコ、中東の国々も同様に、再生可能エネルギーの生産を拡大する計画を打ち出しており、その一部はグリーン水素を製造するためであると言われている。サウジアラビアは、このほどSaudi Power Procurement Companyが、新たに5件、合計330万kWの再生可能エネルギー電力プロジェクトを発表。2050年までにネットゼロ経済を目指すサウジアラビアの計画に沿って、政府は再生可能エネルギープロジェクトに1000億米ドルを投資する意向を表明した。
課題は異なるものの、欧州でも大規模な再生可能エネルギーへの導入は依然として問題として立ちはだかる。再生可能エネルギーがエネルギー全体の中で占める割合は20%程度にとどまっている。そのため、再生可能エネルギーへのアクセスを確保するために熾烈な競争が繰り広げられている。
さらに問題なのは、煩雑な認可手続き、長いプロジェクトサイクル、限られた送電網インフラ、投資対象となる開発適地の減少が、欧州における再生可能エネルギーの普及をさらに妨げていることである。つい最近、ドイツで1,320MWの陸上風力が入札にかけられた。しかし、応募されたのは合計87件、772メガワットのみ。これらはすべて実現可能なものだが、入札量の60%弱を占めるにすぎない。高い原料価格、長いプロジェクトサイクル、承認プロセスが、特に風力エネルギーの拡大を妨げていることが明らかになった。
案の定、WindEurope(欧州風力エネルギー協会)のCEOと欧州の大手風力タービンメーカー5社のCEOらは、欧州委員会のUrsula von der Leyen委員長に宛てた書簡の中で、欧州における風力エネルギーの普及率は高いものの、許認可手続きに時間がかかり、風力タービンの需要が制限されるため、激しい価格競争と工場の閉鎖が起こると訴えている。
再生可能エネルギーの生産能力を増強させるためには、前例のない水準で、様々な産業における事業者が協業し、年間数兆円規模の巨額の投資を行う必要がある。国際再生可能エネルギー機関が作成した試算によると、温暖化1.5℃に抑える軌道を確実に遵守するためには、2030年までに再生可能エネルギーの発電容量を現在の4倍にする必要がある。
1.5℃の目標を実現するために、すべての企業がその役割を果たすことができ、またそうしなければならない状況にあると言えるだろう。何よりもまず、企業はエネルギーの供給、消費、調達の仕組みを徹底的に検証し、エネルギー消費を効果的に削減するための費用対効果の高い解決策を見いだす必要がある。また、可能な限り、再生可能エネルギーに基づく供給者に切り替えるべきである。
次に、自社で太陽光発電設備を設置する可能性があるかどうかを検討する必要がある。ほとんどのオフィスビル、生産施設、倉庫の屋上には、太陽光発電システムや太陽熱発電システムを設置するスペースがあるのではないのだろうか。また、風力発電設備の導入が可能な土地を持つ企業もいるかもしれない。
さらに、場合によっては、バイオガスプラントや熱電併給プラントへの応用も可能かもしれない。現在のエネルギー価格の高騰を考慮すると、独自の再生可能エネルギー設備を導入することは、投資対効果が高く、企業がエネルギーコストを大幅に削減することにつながる。さらに、自家発電施設の設備の導入は、エネルギー自給率の向上につながり、将来のエネルギー供給の危機に対応できる企業へと成長させる。
このような問題は、他社と一緒に取り組み、共同でソリューションを検討するのが良い場合も多い。企業、政府、業界団体、その他の関係者間の連携は、再生可能エネルギーへのアクセスを確保するための有効な手段である。例えば、アフリカのグリーン水素プロジェクトへの投資、COP27で設定された連携、あるいは再生可能エネルギーを活用したVPPのような形で連携することが挙げられる。
サステナビリティ戦略の実施方法については、『 エネルギーとCO2の価格上昇 – 行動を起こすなら今? 』 をご覧ください。また、再生可能エネルギーへのアクセスを確保し、将来を見据えたエネルギー戦略を策定するために、当社がどのように貴社をサポートできるかは、 こちら でご覧いただけます。
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